信仰がなくては、悪意に勝つことは出来ない

アイドルと音楽と演劇が好きな人の闇鍋ブログ

あの口紅はなんだったんですか?

昨日公開されたこのMV

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 山田佳奈さん監督のしなの揶惠さんMV五部作の3つめに当たる作品で、1作目に不動産屋さんのお兄ちゃんで三津谷さんが出て来てからメイン回が来るのを楽しみにしていたのですが、そのメイン回が予想の斜め上すぎた…。衝撃的すぎてTLで1人半狂乱した後、明日はてブ書こ!!と最低限のタスクだけこなしてこんなことをしています(笑)

山田さんは5つすべてで1つの作品、とおっしゃっていたのでこのタイミングで思ったことをまとめてしまうのもどうかと思ったんですが、初期衝動大事!!ってことでつらつら書くことにします。あくまで個人の解釈ですので話半分で、うっわこいつこじらせてんな!?くらいで読んでいただけたらと思います。

 

MVのものすごくざっくりとしたストーリー的には、学生時代からずっと仲の良い友人が好きな三津谷さん演じる主人公は彼と付き合うことをずっと夢見ているんだけど、今の関係が壊れるのが怖くて、友人として彼が自分を好いてくれるのが嬉しくて言い出せずにいたんだけど、ある時友人に女性の恋人がいるのを知ってしまって、失恋する、って話。割と典型的なやつかな?

そういうシーンを好きな俳優さんがやってるっていうのは結構強烈で、おぉってなりました。三津谷さんBL映画は何本か出てるけど脇が多いから自分が当事者なのを映像でやるってあんまなかったんじゃないかな。わかんないけど。舞台になると完全に不明です、把握し切れてないので。ただ、私は見るのは初めてでした。ってこんな話はどうでもいいの!!!(笑)

 

初回見た時、何かに打ちひしがれてしまって涙が止まらなくて。でもその『なにか』が分からなくてすぐに2周目に行けなかったんですが、『なにか』の正体が理解できた時、あまりにもそれが残酷すぎて再度号泣しました。

その何かを見つけたときのツイートがこちら。

前髪上げたり、割と男らしい格好をしている彼に口紅を塗るの、男のまま彼を好きになりたい彼へのあまりにも強烈な人格否定でびっくりした、なんだこれは…しかも冒頭のシーン口紅ついてんだよ口に…最後から冒頭のセリフに繋がるんだと思うとゾッとするし見直してまた泣いた…

本当はツイート引っ張ってこようと思ってたんですけど、誤字がすごいのと勢いだけで書いてるから諸々お恥ずかしくてやめました。

で、また冒頭の台詞がすごくて。

僕が僕としてここにいるのはとても残酷なことで、でも、それでもここに居たいと願うのは、おかしな事なのだろうか

全然おかしくないよ(大号泣)

また三津谷さんが口紅塗られてるときの表情が虚ろなんだけどすごく綺麗で、悲しそうでも嬉しそうでもないの。なんにも思ってない顔。でもきっとなにかを見ている顔。何を見てるんだろう、何を考えているんだろう。女性が自分を飾るための道具を塗られて、男である彼は何を思ったんだろう…。

しかも、この口紅ごみ箱から拾ったんだか、捨てようとしたんだか、恐らく彼にこれを塗った彼女は『自分はいらない』と判断したものなんですよね。私よりあなたのほうが似合うってことなのか、あなたにはこれが必要でしょってことなのかなんなのか。

でも彼は僕が僕としてここいいることを願っている訳で、僕が僕としているために口紅って多分必要のない道具なんですよね。慰めなのかなんなのか。でも、自分には必要のないそれを、女である彼女が彼に差し出すのは、慰めというより見せしめみたいといううか、とんでもなく残酷なように感じて、それに対して彼はどう思っているんだろう。

考えても考えても、彼に口紅が差し出された事に対する解釈にあまりにも救いがなさ過ぎる…。そしてこれ、無限ループにハマっている気がする。

 

LGBTへの理解が叫ばれるようになった昨今、きっと頭で、理論として理解してる人は沢山いると思います。でも、それと好きな人が自分を見てくれるか、そして恋愛が成就するかどうかってなると話がまるで違う。彼がマイノリティであることはこれからも変わらない。

行定勲監督の『GO』という映画の中で、恋人が在日朝鮮人であるということを知ったヒロインが「頭では分かるけど、ダメなの」と恋人を拒絶したシーンがあって。この話を考えてるときにふとそれを思い出しました。

この作品はMVなので、もちろん音楽があって。『私のコンプレックス絶対あなたに言えない』というフレーズが何度も何度も繰り替えされるんですが、2番で『おぞましい姿を見て私の元を去るから言えない』って歌詞があって初見のとき思考回路が停止しました。そうじゃない!!って叫びたいけど実際のところそうなのかなって思うと無責任になにか言えなくて。だって彼は彼として今まで生きてきて、色々なことを知っている筈だから。知ってしまった筈だから。知りたいことも。知りたくないことも。

ざっくりストーリー紹介をしたときに学生時代の友人、って書きましたがこれ作中で明言されている訳では無くて。ただ服装の違いとかふたりの会話の内容とかから推測しただけなんですけど。MVの中でちょいちょいふたりがいい感じの雰囲気で手を繋いだり笑ったりしてる写真が挟まるんですけど、おそらくあれは主人公の頭の中で、きっと彼は会う度にこんなことをしてるんだろうし、それでも彼は今まで思いをはっきりと伝えたことがなかった訳で、そしてそんな長年の儚い片思いは一瞬にして叶わないものだと分かってしまって。

もしかしたら彼にとってこういうことは初めての出来事じゃなかったのかも知れないし、だから彼は友人として『好き』だと言ってもらえた今の関係から踏み出せなったのかも知れないけど。きっと彼はこれからも、何事も無かったような顔をして、彼の隣で友人として笑うんだろうなぁと思うと、辛い…。

 

これを書くにあたって他の2つも見直したんですが、主人公が思いを寄せる友人の彼も、泣いてる主人公に唇を塗った女の人も、メイン回まだなんですよね。となると、あとの2つは2人の話なのか、どうなのか。どちらにしても、主人公の彼への理解を深める手がかりを探して恐らく目を皿にして見る事になると思います。幸せになる道が見えたりしないかなぁ。生殺しのままなのかなぁ。

 

だらだらとここまでしんどいとつらいをくり返していましたが、監督の山田さんがこんなツイートをしてらっしゃいまして。

 これを見た瞬間、そんなにマイナス方向に考えなくてもよかったのでは…?と思ったんですが、取り敢えず走りきる事にしました(苦笑)

あくまで個人の拗らせた解釈ですので、話半分で帰って頂けたらと思います!!!(笑)

 

そして相変わらず言葉よりも雄弁に語る三津谷さんの表情の演技~!ほんと見てて飽きない!!私がこんなに拗らせたのも三津谷さんの素敵な演技のお陰です、ありがとうございました。相変わらず怖い人ですほんと…。三津谷さんのこの作品に対する詳しい解釈が聞きたいんですけど、どうなんだろうなぁ。さくっとブログで紹介されて終わりな気もしなくもない。

 

しんどかったけど、つらかったけど、私はこのたった7分半のお話がとっても好きでした。山田さんの作品見てみたいなとさえ思った。また三津谷さん□字ックさんの作品出ないかなぁ。

 未見の方は是非見てみてください。なにかしら、心に重いものを残していく7分半だと思います。